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初めて見る光景のはずなのに、既視感がある。見たことがあるとすれば、一体どこで。ひょっとして夢の中? そんなまさか。
けれど、自分はその答えを知っている気がした。
あと少しで思い出せそうなのに。ピースがひとつ、足りない。今までのベアトリーチェの台詞が走馬灯のように思い出され、頭がズキズキと痛い。こめかみを押さえていると、レナルドの剣呑な声が聞こえてきた。
「今まではベアトリーチェが大事にしたくないと言ってきたから見逃していたけれど、さすがにもう看過できない。……これ以上、彼女をおとしめるような真似を、僕は許さない」
その言葉が引き金だったように、忘れていたはずの記憶が呼び起こされる。
(……知っている。この台詞。……だけど、本来はこの台詞は私に向けられるものじゃない)
だって、自分は乙女ゲームのヒロインなのだから。
レナルドが糾弾する悪役令嬢はベアトリーチェのはずだ。彼女の今の立ち位置は、シーラがいる場所だ。なぜ、立場が逆転しているのか。
(おかしい。今の状況はまるで、私が悪役令嬢みたいじゃない……)
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