ヒロインなのに悪役令嬢役にされて困ってます!

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 ベアトリーチェを取り囲む彼らは皆、攻略対象の男性キャラたちだ。本来、自分が攻略するはずの相手に見下され、違和感はさらに募る。そのとき、仮面の奥でレモン色の瞳が楽しげに歪んでいるような錯覚を覚えた。  彼女はうつむき、祈るように両手を重ね合わせた。 「わたくし、どうしてシーラ様にここまで嫌われるのか、わかりません。本当は仲良くなりたいのに……」 「ああ、ベアトリーチェ。君はなんて優しいんだろう」  レナルドがベアトリーチェの手を握り、二人で見つめ合う。感動的な場面を前に、シーラは一気に熱が冷めるのがわかった。  なぜなら、先ほどの彼女の言葉は、ゲーム画面で見たテキストと同じものだったから。 (間違いない。彼女も転生者だわ……!)  自分が悪役令嬢役なのを知って、ヒロインになりすまそうと考えたのだろう。前世の知識を使い、他の攻略対象たちの心も掌握して。  しかしなぜ、よりによって今、記憶を思い出してしまったのだろう。  味方のはずの攻略キャラたちは、すでに敵である悪役令嬢に攻略されている。自分の味方はいない。
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