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この茶番劇を終わらせる有効な手立てはない。ヒロインなのに悪役令嬢役にされて、自分を助けてくれるヒーローもいない。
(もうゲームも終盤。私のできることなんて、ないじゃない……)
握りしめた拳から力を抜いた、そのときだった。
「シーラは悪くないよ」
「……フェリオ?」
自分たちを見ていた群衆の中から、一人の紳士が進み出る。異国の金髪はきらきらと輝き、理知的な瞳は海と同じ色。上背があるため、見上げる格好になる。
フェリオはシーラの横に並ぶと、白い仮面を外して、困ったように笑った。
「もう、そのくらいにしたら? 君の望みもすでに叶っただろう」
「……な、なんのことですの……?」
ベアトリーチェが焦ったように声をうわずらせる。フェリオはシーラを一瞥し、言葉を返す。
「それともシーラからすべてを奪わなきゃ気が済まない? それほど、彼女を妬んでいるの?」
「……フェリオ。君が大商人の息子といえども、この国ではただの留学生だ。僕の婚約者を愚弄しないでもらおうか」
「これはレナルド殿下。私は事実を述べたまでです。シーラは悪くありませんよ」
「なに?」
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