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レナルドが片眉をつり上げる。その反応すら想像していたように、フェリオはすっと手に載るほどの大きさの黒い物体を差し出した。
「こちらは、私の商家で試作段階の特殊な機械でございます」
「……ずいぶんと小型だな。一体、何に使うのだ?」
「過去を記録するためのものです」
「ほお。過去を?」
「論より証拠。その耳で確かめてもらいましょう」
横にある突起を指で押すと、ジッジッという機械音の後に、女性の声が続く。
『——お待ちなさい。シーラ・ライティラ! わたくしを見下ろすなんて、いい度胸をしているじゃないの』
『ベアトリーチェ様。これは階段を上っているだけで、あなたを見下ろすためではありません』
『お黙りなさい。男爵令嬢風情が殿下に色目を使うのも大概になさい。本来、あなたごときが声をかけられるのお方ではないのよ』
『……重々承知しております』
『あの方に愛されるのはわたくし。あなたではないの。それを思い知りなさい』
『……ベアトリーチェ様!?』
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