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妻は玄関に、いたにはいたが二指もましてや三指もついてはいなかった。
「あれ?」
思わず声に出てしまった。
「貴方様、一日遅うございました。査定は昨日まででございました」
「査定?」
「そうでございます。20年はまぁまぁよろしゅうございました。今日から21年目に入るのに伴いまして査定をしていたのです」
「俺はお前の夫として不合格ということなのか?」
「う〜ん、三指、二指をつくほどじゃないと言うことです」
「理由を言ってくれよぉ!」
「胸に手を当てて考えてみてくださいな」
胸に手を当てた俺は
身体の温もりが手に移るくらい胸に強く手を当ててみた。
だがしかーし、思い当たることが・・・ぜーんぜんないのだ。
「やっぱり。思いつかない時点でアウトでございます」
「いや待て、今日こそは、"すぐお前にする"つもりだったんだ。嘘じゃないぞ」
「嘘じゃないぞって、力強く宣言されましても、わたしの気分はどうでもよろしいのですか?」
「あ?」
俺には理解出来なかった。
毎日欠かさずあの質問をして来ていたのに、何を言うか?
「だって、毎日聞いてくれていたじゃないか」
「あ、あれは定型文でございまして、仮に貴方様が"お前にする"とお答えになられましても気乗りしなければズバッとお断りするつもりでおりましたのよ」
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