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深いグリーンの看板に、白抜きの店名が書かれているお花屋さん。
「eternal」という文字が、蔦が絡まるようなデザインで書かれている。
季節感を重視した、花の種類や色合い。
店の植物の3分の1以上グリーン。
お花を1本だけ、小さな実か花をつけたグリーンと葉のみのグリーンと合わせて、いつも3本買う。
最寄り駅の周辺に幾つかある生花店の中で、「eternal」が一番のお気に入りだ。
特に花を好んでいるわけでもない両親が付けた名前。
「美しく咲いて欲しくて付けた名前なのよ」
そういう風に言ったのは、後付けなのか事実なのか。確認したことはない。
とは言え、美花は家に花を飾るのが好きだ。それほど多くはない給料から、住居費光熱費、食費などの必要経費を引いて残ったお金の何割かで、花を買っている。最近は狭いベランダにプランターを置き、種や苗から育てて花を咲かせている。
昔からの友達には、名前の美花ではなく「緑」と呼ばれている。学校の花や木を育てたり、弱っていた植物を元気にさせたりしたことが印象強かったらしい。
小6の担任の先生が、最後の学活で一人一人名前を呼んだ時も、美花ではなく「緑」と呼ばれたくらいには浸透していた。
今でも、蕾が解れて花開くのを見守るのは、至福の時だ。枝や蔓が伸びていくのも、葉が繁るのも。
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