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忍ぶように周囲の状況を見回す。
ーー点在するクロスの敷かれた丸テーブルは食事と飲み物が綺麗に配列されており、どうやら立食パーティー中のようで、会場はかなり広く、一見すると洋風RPGの神殿みたいな印象を受けた。
ざっと見て30人以上いる人達は、いずれもドレスやスーツを着ており、貴族の集まりなんだろうと推察できる。
ーーなどと冷静ぶった思考を巡らせて現実逃避したが、実際は混乱していた。
なんだ、前後に何があった!? この状況に至るまでの記憶と直前の記憶が繋がらない!!
取り乱して混乱してしまいたいが、周囲の空気ーー主に王子の真剣な空気から周囲に伝播した硬い空気がそれを許さない。
「…………理由の説明をお願いします」
とりあえず、表面上冷静を保ってどうとでもとれる質問を投げ掛ける。
とにかく情報だ。どう動くにしても情報がなければ動けやしない。
「……しらばっくれるのかね? 私の気遣いを不意にしてもいいというのか?」
第一王子(名前は忘れた)は依然として冷たい表情に侮蔑するように言った。
知らねえよ!! そもそも本当にわかんねえんだよ!?
「…………心当たりが無いことをいきなり糾弾されても、困惑しかありませんので」
ーーとは流石に言えずに、そう返した。
第一王子は、ため息と共に肩を竦めて、
「ーー国家転覆罪」
ざわりと、周囲の空気が騒がしくなる。
「先日、君が捕らえた国家反逆を画策した貴族達ーー彼等は先日、死亡した」
「…………」
「それぞれ捕らえられていた牢獄で自爆したーー魔力痕から爆同石を使用したようだ」
爆同石とは、魔力を流し込むと爆発する希少鉱石だ。とあるモンスターから採取できるのだが、流通量は少なく扱いが難しい。
「爆同石の流通は国が取り締まっているが、情けない話、裏社会で高額売買されているのが現状だ。何者かが流しているとの情報もある」
「……それは大変ですね」
「ほう? 他人事だな?」
他人事だしな。
「ーーところで、君が以前城に来たのは何時だったかな?」
「…………」
いや、知らんよ。
「答えられないのかな? それじゃあ私が君に教えてあげようーー貴族達が死んだ日だよ」
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