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嫌な汗を手のひらに握り混みながら、表向きの表情は冷静を装う。
にわかに周囲がざわめくが、気にしている暇はない。今ここにいる【自分】の状況がわかってきた。
要は貴族達を率いて国を乗っ取ろうとした人間と疑われているわけだ。しかも貴族達を殺して口封じした、と。
「それがこの話とどう繋がるのでしょう?」
全力でしらばっくれる。いや、多分もう確実にネタが割れてるんだろうけどさ!!
「ほう? というと?」
「ーー私がその貴族に何かをする理由はあるのでしょうか? 例えば、私がその貴族達と共謀していたとか、そのような証拠があるとか」
というか頼む!! なんかやり過ごせる突破口をくれぇっ!!!!!!!
「フム……」
第一王子はアゴに手を当てて考え込む。
ーーおや? ひょっとして……
「まさか、何の証拠もなく私を糾弾するおつもりだったので?」
もしそうならなんとかなるかも知れない。
「……いや、先程までは間違いなく糾弾出来たのだがね?」
と、困ったように片目を瞑ったかと思うと、
「『語れ』」
ゆっくりと開いた。
「っ!?」
ーー聖霊眼。
特別な洗礼を受けた王家にのみ発言する魔眼。
魔力を込めて対象を映し出すと使える王子のそれは、『意思あるモノを操る』能力。
「『君は貴族達を殺したか?』」
身体が動かず、王子の質問に自分の意思とは関係なく口を開く。
「『いいえ』」
当然だ。
【俺】はやっていない。
「『国に楯突こうとしたことはあるかい?』」
「『いいえ』」
そもそもこの国の事は今知った。
「『爆同石を国内流通させているか?』」
「『いいえ』」
どんな形かも知らんのだよなぁ……
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