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ある日、亜由美が死んだ。
ご安心あれ不審死じゃない。
私を含め、部活のみんなは青春時代をとうに経て、それなりに年を取っていた。
だから驚く程のことではなかったのだ。
あの瞬間が来るまでは。
葬儀屋さんから式にふさわしい曲を尋ねられ、私達はとても困った。
あんたの好きな曲、誰も知らなかったんだよね。
「確か、モーツァルトだけは嫌だって言っていたわよね」
「あなたほんとに知らないの? いつも一緒にいたじゃない」
みんなが私のことを見る。
「いや、いたって言ったって楽器が同じだっただけだし。
あ、そう言えばあの子、ショパンが得意だったかな。わかった。そっち方面で選んどくよ」
私はそう言って葬儀屋さんを振り返った。
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