現在

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 時刻は一九時四〇分。  夢乃橋の欄干に片肘をつきながら、私はやれやれとため息を吐いた。  せっかく休みが取れて帰省できたのだから、久しぶりに花火でもゆっくり見ようと思っていたのに、偶然通りかかった地元のファンに見つかったのをきっかけに、あっという間に野次馬に囲まれてしまった。写真撮影を頼まれたり、サインをせがまれたり、これではゆっくり観覧どころではない。  もう帰ろうかしらと思い欄干に背を向けた時、「変な花火ー」「なんだあれ?」という周囲のざわめきが聞こえ、私は反射的に振り返って空を見上げた。  その瞬間、私は思わずふふっと、噴き出してしまった。 「作れるようにって、そっちじゃないわよ」  かつて夢を追う私の背中を押してくれた、どっかの花火バカとの思い出に浸りながら、私はもう一度、橋の欄干にもたれかかった。
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