囚われる女、楠瀬恵海

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彼とこんな関係になったのは一年前。 先生が闘病を始めた直後、ゼミが同じだった皆でお見舞いに行った後からだ。 その時既に智生からの連絡は絶えていた。 私も智生もあまり自分から近況を発信しないので、別れた事を共通の友人達は誰も知らなかった。 唯一知ってるのは弟の惣一郎のみ。 智生から別れ話を切り出されたた日、私は弟に酷く八つ当たりし荒れまくって泣いた…。 私達の代は特にお世話になった方なので、お見舞いに行かないという選択肢はなかった。しかし別離に納得してない私は、本人や旧友達を前に醜態を晒してしまいそうで行きたくなかった。 私はそれ程智生を愛していた。 いまだ私達が恋人同士だと思ってる友人達にいずれ話さなくてはならない。 何て話す? 彼から切り出すかもしれない? そんな葛藤を抱えながら約束の日を迎え、当日集まったのは私と智生、柿本、深澤萌、高桑駿太、 工藤由紀の6人だった。 言い出した由紀は、母校の教務課に勤めている。車で来た彼女がお見舞いの品を手配していた。
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