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病院の正面玄関で待ち合わせ病棟に向かい、小一時間後全員が神妙な顔で病室から退いた。
階下に行くエレベーター前で
「竹中先生、随分細くなっちゃったね…」
萌が口火をきる。
「余命宣告受けたらしいよ」
下を向いて由紀が呟く。
「俺らが在学中はビール腹だったのにな」
駿太がわざと明るく言う。
それを察した柿本が、
「よく『私はビールしか飲まない!』って豪語してたな」
先生の口真似をし皆が微笑む。
私と智生はさっきまで病室内で肩が触れそうな距離に居たのに、今はお互い離れた場所に立っている。
病床の先生から力ない声で過去の仲をからかわれ、二人で笑い顔を作るしかなかった。
「どうしたの?さっきから黙って」
萌が私の顔を覗く。
「そういや、智生も静かだな」
柿本も智生を見る。
「もしかして先生に仲人頼みたかったとか?!」
駿太がトンチンカンな答えを出す。彼はたまに本気でボケる。
「実は私達…」
私が正直に話そうとした時ポンッと、エレベーターの到着を知らせる音がした。
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