60人が本棚に入れています
本棚に追加
戸惑う男、柿本玲司
楠瀬恵海は入学当初からパッと目を引く美人ではないが、手入れされた肌と品の良い身なりで美人な部類に入った。自分の見せ方を知っている感じ。
だがいざ話してみれば堅物、勉強漬けで面白味がなかった。
勿体ない、あのルックスならモテるだろうに…
そう思わせる人間がもう一人いた。
園田智生、コイツは授業以外ほぼ親戚の酒屋のバイトをしていた。イケメンで運動神経も良いのにクソ真面目。
二人の共通点は誰にでも優しいのに、自分の弱みを見せないところ。
楠瀬が一方的に智生に挑む成績トップ争いをしていたので、同じゼミになったのを機に2人が男女の仲になるなんて思わなかった。
しかし予兆はあったのかもしれない。
いかにも生娘っぽい彼女が唯一近距離で話す相手が智生だった。
智生はガツガツしないでも女が寄ってくる優男。育ちが良いのか男同士下ネタで盛り上がっても話に参加しない。きっとセックスもマニュアル通りの優等生だろう。
ゼミ室で自分達の他誰もいないと思ったのか、2人が額をくっつけお互いの瞳を覗き込む様に笑い合っている姿を見て、いつになく俺は心中で毒づいた。
(真面目な奴らはお上品なセックスでもしてればいいさ)
別に楠瀬と寝たい訳じゃない。
気の強い処女なんて面倒だし、彼女と恋愛してる自分は想像がつかない。
只あの頃、園田智生といる彼女に対し無性に腹がたった。
最初のコメントを投稿しよう!