ジプシーウォーター 彼の香り

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じゅん…… じゅん……アラーム……止めて…… 耳に馴染みのある声が俺を呼んで、ゆらり、と頭ん中が揺れる感覚と一緒に目が覚める。 最高に気分が悪い。 スマホのアラームが全力で俺を呼んでて、でもその音源が見当たらなくて。 必死で目を開けて……景色が記憶と照合されて遥の部屋って分かって…… ベッドの上……隣を見れば、遥が横向きに丸まって眠ってて、服を着てたことにほっとしつつ、吐き気に眉を顰め…… ともかく音を止めなきゃ、って俺は、机の上に置いてある俺のカバンにふらつきながら近づき、スマホを取り出してアラームを止めた。 時刻は午前五時。 なかなか起きれない俺は、自分に予告をする意味でアラームのスタートは五時。実際の起床時間は五時半。 どろどろの二日酔いの目で見つけたスマホの電話着信マークを触れたら、履歴に伸一さんの名前がずらっと並んでた。全部で……26件。 LINEは未読13件で、そのうちの3件が伸一さん…… 20:58 電話に出ること 21:25 今どこにいるか連絡すること 23:51 何時でもいいから、これを見たら必ず電話しろ 名前を見ただけで泣けてきた。 出来ないよ。約束破ったし…… 伸一さんはきっと怒ってる。電話に出なかったから……きっと飲みに行った、約束を破ったって思ってる。しかも遥と外泊したことがもしバレたら…… 何もなかった、なんて信じてくれねえだろうな…… 「遥……悪い……風呂借りて良い?酒抜きたい……」 「んー……沸いてる……多分。昨日……伊庭ちゃんがセットして……」 声はそのままフェイドアウト。 俺はスマホをマナーにして部屋を出ると、勝手知ったるこの家のバスルームのドアを開けた。
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