辺り一面を埋め尽くす無数の花々

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『本年も見事な花を咲かせておるな』 『はい。陛下』 忠実な臣下を伴い、満開の花を咲かせている木々の間を心穏やかに散策しながら。 『年々植樹する木々は増えておるから、臣民の間でも花見の名所としてこの場は人気があるな』 本日は煩わされる事なく予が楽しめるように、臣民の立ち入りは禁止しているので、長年に渡り仕えている臣下と静かに花見を楽しめている。 『ヒューーッ』『ハラッ、ハラッ、ハラッ』 春風に吹かれて花開いた木々から花弁が舞い散る様子を、予は満ち足りた想いで眺めてから。 『予に(そむ)叛徒(はんと)は今後もこの場に生き埋めにして、上に植樹を行うようにせよ』 主君である予の命を受けて、忠臣が恭しく深々と御辞儀を行い。 『はい。陛下』 生前は予に(そむ)き世を乱した不逞の(やから)も、生き埋めにされて木々の養分となる事で、死後に初めて役立つようになる。 『ヒューーッ』『ハラッ、ハラッ、ハラッ』 『良い叛徒(はんと)は、死んだ叛徒(はんと)だけであるからな♪』 舞い散る花弁に包まれながら、予は心底より満ち足りた時間を堪能した。
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