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ふたたびアルタ前
午前十一時、約束の十分前にアルタ前に立った。線路沿いに建つビルの向こうに、西口の高層ビルのてっぺんが強い日差しを受けていた。
三年という“時”の長さを考えてみた。
ランドセルを背負った小学六年生が、自意識過剰気味の中学三年生になる。高校一年生が大学生になる。やはり長い年月だ。三年もあれば人は見た目も考えも変わる。短大に入ったばかりだと言った彼女は、もう社会人になったはずだ。
ふっと苦く笑った僕は腕時計を見た。とっくにお昼を回っていた。三年の間に引っ越しをしていたら、彼女が住んでいた新百合ヶ丘の賃貸マンションを外から眺めてみるのも一興だと思った。
下高井戸にある僕の部屋に案内して、穴が開いていた場所を教えるのも楽しいと思った。それはここ一週間ばかりの間に起きた出来事だと。
さて、どうしよう。昼飯を食べるにも混み合っている時間だし……少し考えて封筒を取り出し、穴の向こうに張り付いていた彼女からの手紙を読み返した。
『三年後、ダークな色の服を着ていたら私は誰かにさらわれています。ありえないけど、喪服を着ていたら私をさらった人と結婚しています。それでも謎の探求にはお付き合いしたいと思います。悲しい話だけれど、もしも彼氏がいなかったら明るい色の服を着ていきます。
もちろん、お付き合いするかどうかは分かりません。もしも現れなかったら、ここにいる私がそちらにつながっていなかったか、忘れてしまったかのどちらかでしょう。でも会えるといいな。もしも会えたら、その日がどうか晴れでありますように。
床野杏奈』
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