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起床したら、身支度を整えて庭に行く。朝と夕に水やりをするのが日課になった。
庭とは言い難い立派な場所。辺り一帯シヴァが管理している。樹木の種類が異様に多く、食用や薬用だけではなく、生活に不可欠な原料も多岐にわたる。
畑には薬草や薬花、野菜など所狭しに植えられている一角に、シヴァへプレゼントした果物の種を植えた。
シヴァは朝昼は庭の管理を行い、夜は魔獣の討伐をするのが仕事で、わたしは補佐係として登録されたと話してくれた。
「ぅわぁ!もう蕾が出てる」
「魔力を浸透させて成長するし、水分より魔力重視だと言ったろ?」
水やりの際に、魔力のベールを覆うよう言われている。願掛けっぽいし、わたしには魔力が見えない。
だが、シヴァが言うには、樹木たちが反応しているという。
「わたしに魔力?信じられない」
「だがカバンに入った魔石も反応してるぞ」
カバンとはサコッシュのこと。日頃ゼニが入ったサイフをいれ、腰のベルトにはナイフを携帯してる。
普段から魔石は様々な魔力に接触させたらいいと諭され、雅緋から購入した魔石が蓋になった香油も入れていた。
ファスナーを開くと、キラッキラ魔石が光ってた。
「綺麗ね」
「まぁな。モカは雅緋や小雪と親しいから、より強く反応が出る」
確かに翠、赤、紫の3色がより強く発光していた。
パートナーのシヴァは風属性。雅緋は火属性で小雪は水属性だ。
「もしかして、闇属性と光属性のヒトと友達になれたら、よりLevelUpするとか?」
「日常の魔力は心配なくなるだろう。だが無理すれば歪みが生まれる。それに……」
シヴァがわたしを抱き上げた。
「俺以外の男と親しくなるなんて感心しないな。なるべく女にしろよ?」
耳許で囁く吐息は全身に巡っていく。そのまま耳たぶから首筋にかけて甘噛みされるとヤバい。
「もぉッ、外ではダメ。」
「ダメだと拒否られたら、したくて堪らなくなるんだ。」
ゆっくりと倒れ込むように、ベットに横たわった。
「今日は何について語ろうか」
「ちょ、やん待って。約束してたよね?」
一瞬でシャツのボタンを外したシヴァを睨んだ。
「忘れてた」
シヴァ歯を剥き出すようにしながら、わたしを抱えてベットから抜け出した。
「買い物に行こうか」
「うん!」
シヴァは生活に不可欠な慣習や日常生活における常識や情報と擦り合うよう、この世界Aliveの理も丁寧に教えてくれたが、今日まで外出許可を与えてくれなかった。
「頼むから俺から離れるなよ?」
わたし信用ないのかな?
憮然とした顔付きに気付いたシヴァは謝りながら頬をすり寄せた。
「阿呆ぅ。他のヤツに目をつけられたくないだけだ」
熱い吐息が鼻にかかって、ドキッとした。
「……もぉ甘過ぎ」
こっそり呟いたつもりが、シヴァには聞き取れたらしい。上機嫌でモカを抱き寄せた。
【続く】
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