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健と深海は刑事に事情を話して、桑畑が入院している病院へ向かうことにした。
病院に到着すると、刑事が同席の元、桑畑の病室に入った。
「お加減はいかがですか?」
健が桑畑に尋ねると、桑畑は首を振った。
「最悪だよ。こんな大怪我をさせられて友人は殺されて。犯人を早く見つけて欲しいもんだ」
健から見て、流石に桑畑はソワソワしている様に見えた。
「こちらの深海さんが石塚さんに近付いた時、石塚さんの息があったと分かりあなたはとても驚かれていた」
健は早速本題と、静かに話し始めた。
「……もうダメだと思っていたのに、生きていてくれて良かったと思っただけさ」
桑畑も静かに返す。
「桑畑さんの腕の傷、誰に付けられたものですか?」
健の質問に、桑畑は怪訝そうな顔で健を見る。
「傷?ああ、これは痒くて自分で」
「いえ。その傷は、石塚さんに引っ掻かれたものですよね?」
健が言い換えて、桑畑はピクリと反応した。
「違いますよ。石塚じゃない」
桑畑の顔色は悪かったがどこか余裕があった。
「でも石塚さんは最後に言ったんですよ。腕を齧った。つまり、腕を引っ掻いた。と。“かじる”って伊豆の方言らしいですね。俺はそんな方言があると知らなかったのでずっと違和感があった」
桑畑は右腕の傷を左手で握った。
いくら石塚が「かじった」と深海に言ったとしても、石塚が桑畑を引っ掻いたと言う証拠はどこにも無い。
「違う!これは石塚に付けられた物じゃない!自分でやったんだ!石塚にやられた証拠でもあるのか?」
必死な桑畑に、健は刑事を見る。
「桑畑さん。脱いだ服を見せてもらっていいですか?」
刑事の言葉に桑畑はギクリとする。
入院して桑畑は病衣に着替えていた。
「……」
桑畑は答えられない。
刑事がなぜ気づいているのか分からないからだった。
「もちろんこれは任意です」
でもいつでも、捜索令状は準備できるぞと言う無言の圧だった。
「……どうぞ」
もう逃げられないと観念したのか、桑畑は大人しく刑事が服をクローゼットから出すのを見た。
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