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桑畑が持っていた爪が、本当に石塚の物なのかを調べるために、刑事は急遽証拠品を持って病室を出た。 もちろん、他の刑事が桑畑のそばに残っている。 桑畑は真犯人がいることを匂わせていたが、まさか石塚が「かじった」と深海に伝えていたとは知らず、いくら手袋をはめて指紋を残さず犯行を犯していたとしても、結局は石塚の爪の中の皮膚片が事件解決の鍵になった。 桑畑はもう被害者ではなく、被疑者になるのだ。 「どうしてこんな事を」 深海が残念そうに桑畑に尋ねる。 「……まさかこんな形で、直ぐに犯行がバレるとは思ってなかった。計画通りにいかないもんだね」 ガックリと肩を落として桑畑は呟く。 「部屋に残っていた靴跡は誰の物だ?仲間がいたのか?」 残っていた刑事が尋ねる。 桑畑は首を振る。 「前もって、大きなサイズの靴で家の中を歩き回って足跡を残した。そして、あんた達が来る前に石塚を殺して、俺はコンビニに行ってアリバイを作るつもりだったんだよ。俺が疑われたとしても、俺が殺した証拠がなければどうにかなると思ってね」 安易だなと、警察もバカにされたもんだと健は思った。 そして、まさか自分達をアリバイ工作に使うとは、健は腸が煮えくり返る思いだった。 「その靴は?」 再び刑事が尋ねる。 「石塚と会う前に処分した。場所はー」 話を聞いた刑事は、アリバイ工作に使ったと見られる靴の捜査を指示する。 逮捕状の請求もしているのかと健は思った。 桑畑はため息を吐き、頭を抱えた。 「あいつが俺の腕を掴んでかじくりやがった。あの野郎、何もかもだらしない奴だったが、爪も長く伸ばしてやがって」 これが計画を狂わせたのだ。 「奴の爪に俺の血が付いていて、このままじゃ直ぐにこのことがバレると思った。俺は慌てて、小物入れの引き出しから爪切りを持ってきて奴の爪を切った。そうこうしてるうちに、あんた達が到着する時間は近付いていて、もうコンビニに行くことは無理だと思い、自分の頭をゴルフクラブで何度か殴った」 石塚の爪を切り終え手袋を外して隠し、素手でゴルフクラブで自分の頭を桑畑は殴った。 元々ゴルフクラブは桑畑の所有物なので、桑畑の指紋が出てきても不思議はない。 「そこまでして、なぜ……」 刑事に尋ねられて桑畑は悔しそうに目を瞑る。 自分で自分を殴るのは、流石に力が入り切らず躊躇いもあったのだろう。 それでも、自分も被害者にならなければと桑畑は必死だった。 「あんた達が入ってくるのがわかってわざと呻き声を上げた。もう石塚は死んでると思ってたし、あんた達を誤魔化せれば、俺も被害者の1人でどうにかなると思った」 だが、石塚はまだ事切れてはいなかった。 まさか最後の言葉を、深海に託していたとは思ってもいなかった。 「もっと徹底的に殴りゃ良かった。飛びつかれてかじられたことで動揺して、奴がまだ息が有るとは思わなかった」 悔しそうに桑畑は語る。吐き出さないと気持ちが収まらないほど興奮している様に健には見えた。
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