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桑畑は顔を上に向けて宙を睨む。 黙って話を聞いていた健は、なぜ桑畑が石塚を殺してしまったほど憎んでいたのか知りたかった。 「どうして石塚さんを?」 桑畑はフッと笑う。 「あいつに全てを奪われたからさ。あの家だって、本当は売りたくなんてなかった」 余程の憎しみがあるんだろうと健は思った。 「……20年前に結婚して家を買ったんだよ。新築の建売をもちろん借金をして。でもそれが欠陥住宅だったんだ」 それを売り付けたのは石塚だった。 「奴は知ってたんだよ。知ってて売れ残りの家を俺に売り付けた」 桑畑は悔しそうに掛け布団を握る。 「2年ぐらい経って、雨漏りがしたり扉が開かなくなった。どんどん家は酷い状態になって、とても住める物じゃなくなって、仕方なく俺達は引っ越しをすることにした。業者はもう倒産していて保証だって受けられなかった」 不動産業に携わる健は話を聞きながら、桑畑の恨みも理解できないわけではない。 ※現在では、平成21年10月に施行された住宅瑕疵担保履行法により、保険や供託金での修繕が可能になったが、それ以前は今と違って、欠陥住宅の被害者は守られていなかった。
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