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ICUの中の騒つく音に、健は目を瞑ったままピクリと反応した。
ゆっくりと静かに目を開けた健は、自分がどうなったのか全く思い出せず、ただぼんやりと天井を眺めた。
麻酔や痛み止めが効いている間は、意識が回復しても朦朧としていたが、やっと感覚がハッキリしたのは、手術から3日後の事だった。
「……気が付いたか?」
葵の声がした方に、健は少しだけ首を向けた。
「俺……」
掠れた健の声を聞いて、葵と静真は安堵のため息をついた。
やっと反応してくれた事で、峠は越えたと確信した。
「無事で良かった。手術直後は生死の境を彷徨っていたんだぞ。もう、無理かもと言われた」
そんな事態になっていたのかと、健は自分の身に起きた事を少しずつ思い出して来た。
「……そうだったんですね。はは、生きてる」
目覚めたばかりで健は声を出し辛かったが、呑気な様子にやっといつもの健だと葵と静真は微笑む。
「本当に良かったよ。ろくに話もできないまま、また別れるとなったら、俺……俺……」
静真は健の手を軽く握る。
静真の熱を感じて健は心まで温かくなる。
「俺、思っていた以上にそんなにひどい怪我だったんだね。確かにめっちゃ痛かったけどさ」
戯ける健を葵は真剣な顔で見る。
「実は、お前の血液が特殊すぎて万が一の時は覚悟して欲しいと言われた。輸血を必要としなくて本当に良かった」
「特殊?」
何が特殊なんだと、健は怪訝な顔をする。
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