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「お前はボンベイ型と言って、100万人に1人と言う稀血(まれけつ)と言う珍しい血液だそうだ」 「ボンベイ型?」 聞いたことがない言葉に、健は眉を顰める。 ボンベイ型。 それは、O型の血液を持つ者の中で稀に発生する。 実際にはA型やB型の遺伝子を持っているにも関わらず、一般的な血液検査ではO型と判断されるのである。 その要因は、通常血液型とは、赤血球の表面にある抗原の種類から分類されるからだ。 A抗原だけの場合A型。 B抗原だけの場合B型。 その両方を持つとAB型。 逆に両方とも持たない場合はO型。 そして、健の血液型はボンベイ型のO型。 A抗原、B抗原は、赤血球の表面にあるH抗原にくっついているのだが、ボンベイ型はH抗原自体が無く、もしA抗原やB抗原が遺伝子にあったとしても、通常の血液検査では検出されることはなく、より詳しい検査によって初めてボンベイ型と判断されるのだった。 「お前がその特殊な血液だったために、すぐに同じ血液を用意する事が出来なくて、お前自身の血液でどうにか手術をしたんだよ」 健の場合、自己血輸血で難を逃れる事ができたが、ボンベイ型の場合、O型の血液を輸血する事ができず、同じボンベイ型の血液を輸血するしかないのだ。 「そうか……」 一通り説明を聞いて、健は納得したように呟き目を閉じた。 健の体の中にはB型の遺伝子が、弥之の血が流れていたのが分かり、涙が出そうになりそれを葵に悟られたくなかった。 「……そうだったんだ。俺は……本当ならB型のはずだったのか」  母さん、ごめん。疑ったりして、ごめん。俺、俺、本当に2人の子供だったんだね。 ずっと母親に対して持っていた疑念が、この事件により弥之と雛絵の子供だとやっと証明されたのだった。
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