4/7
前へ
/206ページ
次へ
「血液型の事、兄さんが眠っている間に鵜飼さんから聞いた。ずっと悩んでいたんだな。兄さんには、全てを抱えさせてすまなかった」 静真は自然と健を兄さんと呼んだ。 健はそれを聞いてにっこり笑う。 「……やっと、兄さんと呼んでくれたな。怪我をして良かった」 満足気な健の顔に、静真はムッとした顔で健を見ていたが、フッと息を吐くと笑う。 「良くないよ。もし兄さんが戻って来なかったら、俺はずっと後悔する人生になった。こうして再び話が出来て本当にホッとしてる」 静真の言葉を、健はただ頷いて聞く。 「この先は、怪我を治す事に専念してくれよ。余計な事は考えなくて良い」 葵は今回の事件の事で、健が無理をするのではと思いブレーキをかける。 「分かってます……でも、1つだけ気がかりがある。品川という社員の事なんです。弁護士に頼もうと思っていた事があって」 菜々緒が真古登に脅迫されていたことを、健は簡潔に葵に話す。 「そうか。お前が助けた女性はそんな事があったのか」 「彼女に助けると約束をしたんだ。出来れば親父から弁護士に話してもらえませんか?品川とは絶対に縁を切らせたいんです」 「そうだな。厄介な問題に発展する前に弁護士に指示を出しておく」 今回の事件だけでも健が大きな損失を被ったのだから、会社に不利益になる芽は葵も早く摘み取りたい。 「とにかくお前は体を休めろ。もう少し元気になる頃には、今回の事件も落ち着くだろうから」 「はい」 健がホッとした顔で葵を見る。 あまりICUに長居もできないので、また見舞いに来ると伝えると葵と静真はICUを出た。 「良かった。意識がハッキリして。このまま順調に回復してくれると良いけど」 まだ心配そうに静真は言う。 「大丈夫さ。峠は越えたんだ。直ぐに一般病棟に移れるだろう」 大きな試練だったが、健の生還に2人は一先ずほっとした。
/206ページ

最初のコメントを投稿しよう!

124人が本棚に入れています
本棚に追加