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「血液型の事、兄さんが眠っている間に鵜飼さんから聞いた。ずっと悩んでいたんだな。兄さんには、全てを抱えさせてすまなかった」
静真は自然と健を兄さんと呼んだ。
健はそれを聞いてにっこり笑う。
「……やっと、兄さんと呼んでくれたな。怪我をして良かった」
満足気な健の顔に、静真はムッとした顔で健を見ていたが、フッと息を吐くと笑う。
「良くないよ。もし兄さんが戻って来なかったら、俺はずっと後悔する人生になった。こうして再び話が出来て本当にホッとしてる」
静真の言葉を、健はただ頷いて聞く。
「この先は、怪我を治す事に専念してくれよ。余計な事は考えなくて良い」
葵は今回の事件の事で、健が無理をするのではと思いブレーキをかける。
「分かってます……でも、1つだけ気がかりがある。品川という社員の事なんです。弁護士に頼もうと思っていた事があって」
菜々緒が真古登に脅迫されていたことを、健は簡潔に葵に話す。
「そうか。お前が助けた女性はそんな事があったのか」
「彼女に助けると約束をしたんだ。出来れば親父から弁護士に話してもらえませんか?品川とは絶対に縁を切らせたいんです」
「そうだな。厄介な問題に発展する前に弁護士に指示を出しておく」
今回の事件だけでも健が大きな損失を被ったのだから、会社に不利益になる芽は葵も早く摘み取りたい。
「とにかくお前は体を休めろ。もう少し元気になる頃には、今回の事件も落ち着くだろうから」
「はい」
健がホッとした顔で葵を見る。
あまりICUに長居もできないので、また見舞いに来ると伝えると葵と静真はICUを出た。
「良かった。意識がハッキリして。このまま順調に回復してくれると良いけど」
まだ心配そうに静真は言う。
「大丈夫さ。峠は越えたんだ。直ぐに一般病棟に移れるだろう」
大きな試練だったが、健の生還に2人は一先ずほっとした。
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