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「若様、私は何もしていません」  私にかけた声より1オクターブ高い彼女の声と数人の足音が聞こえる。潤たちがこの雰囲気を察知して来たんだろう…悪いことしちゃったな。素敵なストールも見つけて楽しめそうだったのに失敗しちゃった。みんな、ごめんなさい…目をぎゅっと閉じ彼のシャツを掴むと彼は私の後頭部をポンポンと叩く。 「時間の無駄だな。ソイツどこかやって」 「待って下さい、若様!私にお手伝いさせて下さいっ」 「うざい。終わりだ、帰る。伊東に連絡。買い物は後日場所を変える。館の奴には上の買い物キャンセルと伝えろ。親父にも…」 「ちょっと、正宗。ちょっと待って。お願いだから待って」  どうしよう…大変なことになったと思い、私を抱いたまま立ち上がった彼に待ってと言ったものの上手く収める言葉が見つからない。彼は私を下ろし乱れていたであろう髪を大きな手で撫で整えながら 「待てるかどうかはお前次第だ。アイツに何を言われた?」  正宗のこの声と視線に逆らえる訳もなく口を開く。 「大したことないのよ…」 「大したことないかどうかは俺が決める」  被せぎみに言われ…もう降参だ…若様に恥をかかせる気?レディース商品の前に一人で座らせておいて。ここでいいと言われてたんじゃないの?ずいぶんお偉いのね…ともっともな事を言われただけで、私がこういう店での買い物方法を知らなかったのが原因だと打ち明けた。  
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