6,ここにいます

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6,ここにいます

 雨が降りしきる中、夜の雑踏に紛れて何かが動いた。犬だろうか、猫だろうか。街ゆく人々で、その何かに目をくれる物はいない。  あんな所で、あんなに淋しそうに陽気なダンスを踊っているというのに。  踊りに満足したのであろうそれは、傘を差した人波に紛れてフラフラと動き始めた。  大通りから住宅街に入ったそれは、一軒のアパートの前で動きを止め、その中から一つの部屋を選んで、ドアの前に立った。そのドアの中からは、何年ぶりかに新たに名前を付けてくれる人間の匂いがした。  スッと家の中に入り、玄関で家主を待つ。表情は変わらないがおそらく期待しているのであろう。真っ暗な玄関でヘッドスピンの練習をしながら家主を待つ。  一時間ほどして、カギの開く音がし、明かりが灯る。雨に濡れた若い男が入ってきた。 「え、何、これ……?」
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