イル

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 パチリと部屋の灯が付き、周囲が明るくなる。 「天井かっっ!」  奴は、上にいる俺に向かって、スリッパを投げつけて来た。  俺はそれを素早く避けると、今度は壁へと移動した。  戸の間に入り込めば、もう安心だ。 「逃がすかっっ」  そう言って、俺が逃げ込んだ隙間にスプレーの先を入れて来ようとする。  これは、俺達には致命的なものだ。  これを振りかけられると、俺達は秒速で絶命してしまう。  俺は、急いで戸の隙間の奥へと急いだ。 「まて、ゴキブリっっ」  そう。  俺達は、春先になると目覚め、家主がいない間に、出て来て、ご飯を食べたり結婚相手を探したりしているのだ。  そうして。  今日も今日とて、俺達は家主との攻防に命を張っているのである。
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