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「おはよう、シャリオ!」
「あ、おはようレイラ……」
「なあ~によ、元気ない! 笑顔の練習、ほらっ」
元気がないシャリオを励ますようにレイラは明るく笑って見せる。その笑顔はいつもよりもきらきら輝いている。
「レイラ、何かいい事あった?」
「うん! 夕べ久しぶりにお母さんと、ずーっとお話してたの。そのまま一緒に寝ちゃった!」
「へえ、珍しいね。レイラって私達よりちょっと大人びてるから意外」
「励ましてもらったの。昨日ね、見ちゃったの。ロックスが告白するところ」
「え、あ、その……」
「いいの、本当はロックスの気持ち知ってたから。ロックスが魔法の修行頑張ったのだってシャリオと一緒に王都に行きたいからだって事もね。昨日お母さんに泣きついたら、ちょっとすっきりした。ロックスだって結局はいなくなっちゃうんだし、私はこの村で一番私を幸せにしてくれる人を探すわ。だからシャリオ、幸せにならなくちゃだめよ? それに王都に行ったらシャリオはお父さんとも再会できるんだから! 笑顔笑顔!」
「レイラ……ごめんね、ありがとう」
感極まった様子のシャリオを優しく慰める。今レイラは心から楽しいのだ。
この女が、自分の事など見向きもしない男が、半年後、あんな目に合うのが楽しみで仕方ない。だからいくらでも優しくできる。
この国はおかしいと、魔法使いが絶対に王宮から帰ってこない事に疑問を抱かないよう、蝶よ花よと持ち上げ続けて。
この国の魔法使い以外の人間全員、今日も嘘をつく。
憎い魔法使いに笑顔を、憐れな魔法使いに良い人を演じて。
自分達の生活を豊かにしてくれる家畜を逃がさないために。
END
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