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その世界は魔法が使える者は特別だ。攻撃魔法、治癒の魔法、物を作り出す魔法、様々な種類がある。魔法使いがいる数が多いだけ国は豊かになる。
この国も例外ではない。魔法使いの中でも特に優秀な者は国王直属の指揮下に入り国の為に働く。給料は国の予算が4分の1使われるほどで、国に属すれば金がかかる物はすべて無料で手に入る、税も払わない。魔法使いの家族全員が対象となる。
雲の上の人、住んでいる世界が違う。魔法使いは親から子へ受け継がれるが、ある日突然魔法使いとして目覚めることもある。遠いご先祖様が魔法使いだった、というパターンもある。
魔法使いは何をしても許される。軽い犯罪も、度を越えた我儘も。中には横柄な者もいるが、それではいけないとなるべく平民と仲良くしようとする魔法使いたちもいた。
レイラは魔法使いではない。しかし、身近に魔法使いは数人いる。幼馴染が二人、魔法使いなのだ。子供の頃はわからなかったし、自分も魔法が使えると信じていた。しかしそうではないとわかるとだんだん胸の内に黒いものがくすぶって来る。
彼女たちは将来が約束されている。魔力が非常に強く、半年後に王宮へ招集されることになっている。本来は王都へ推薦をすると1年以上査察されるのだが、魔力が桁違いだったらしく国王が異例の措置をしたのだ。
羨ましいを通り越して憎らしい。そんな事を表に出すことなく、いつも通り接した。
嘘をつくのは、とても辛い。幼馴染の女の子、シャリオの事は友達として好きだ。良い子だし一緒にいると楽しい。もう一人の幼馴染のロックスも好きだ。こちらは、淡い恋心を抱きながら。ロックスがシャリオを好きなのもわかっている、魔法使いではない自分など眼中にない事も。
今日もレイラは嘘をつく。憎くて好きなシャリオに笑顔を、振り向いてもらえないロックスに良い女子を演じて。
レイラの母とシャリオの母は親友だ。その繋がりで仲良くなった。シャリオの父親が魔法使いで、母はものすごい玉の輿だと当時騒がれたらしい、魔法使いは基本魔法使いと結婚するからだ。大恋愛の末の結婚だった。
「お母さん」
レイラは母に問う。
「なあに?」
「お母さんは、シャリオのお母さんのことがイヤじゃなかったの。魔法使いと結婚したんでしょ、働かないで贅沢三昧で。何で仲良くできるの」
レイラは静かに涙を流していた。今日、ロックスがシャリオに告白しているのを見てしまったのだ。シャリオは返事は待って欲しい、といっていた。レイラがロックスを好きな事を知っているからだ。
「そう、レイラもそう言うのを考える年なのね。辛かったね」
母はそっとレイラを抱きしめた。12歳にもなって母の胸で泣くなどみっともない、と思いながらも温かな母に抱きしめられ静かに涙を流す。
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