キルシウムの純愛

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「涼ちゃん、離れないでね」 暗闇の中でアザミがそう言うので、僕は「大丈夫だよ」と手探りで彼女の手を見つけ出し、安心させるように強く握った。普段はなかなか自分からこんなことはしないのだけれど、これだけ暗ければ抵抗なく触れることができた。繋いだ手を振りほどいて上下に動かしたらきっと、彼女の体の凹凸だって感じられるし、抱き締めることだってできるだろう。今まで散々彼女の姿を見てきたのだから、今くらい顔を見ないまま会話をしてもバチは当たるまい。 光のない空間に閉じ込められてからどのくらいの時間が経ったのか、僕は知るすべを持たない。目覚めてからはまだ10分も経っていないような気がするけれど、どうだろう。頭はじんじんと鈍く痛み、少し動かすだけでぱっくりと割れてしまいそうだ。先ほど額に触れたら、どろりとしたものが手のひらにべっとりと張りついて悲鳴を上げそうになった。このままだと、あと何分もつか分からない。 一体どうしてこんなことになってしまったのか。ここから抜け出すにはどうしたらいいのか。
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