乱文

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乱文

わたしこうしないとだめなんです。生きていけないんです。梨花一枝春雨を帯ぶ。あなたにもらった口紅は、もうすっかりすり減ってしまったわ。ごちゃごちゃで関連性のない駄文でも、なんとか書きなぐっておかないと、停滞感に苛まれて、死ぬよりも苦しくなるんです。 朝。17日。洗濯をする。 昼。18日。書き古したノートが破れかけている。 夜。19日。烏が死ぬ夢を見る。 ダーリン、ほんの少しだけ痛みをください。あなたの薬指を噛みちぎる、わたしに罰を与えてください。飴玉を砕くように、優しくわたしを壊してください。透明な空にかかる虹のように、曇りガラスを裂く雨粒のように、わたしの視界をほんの少しだけ変えてください。真心なんていらないわ。涙はもう流せないし、口紅だってもうないの。 朝。20日。本を読む。 昼。21日。木綿豆腐、ねぎ、ジャガイモ、人参、豚肉、もやし、鯖の缶詰。 夜。22日。アルバムをめくる。 死に至る病。枯渇中毒。引っ掻いた愛の証。東京には空がないと言う。本当の空を見たいと言う。暗がりに潜む毒牙を手に入れたい。甘いもの、お菓子、麵麭と珈琲。文字の羅列。 どうか精査する時間をください。世間に認められたいわけじゃない。そうやっていつも恨み節。認めさせたいのは他人ではなく自分自身で、無視されるのが1番嫌い。深く狭くを好むのに深く広くを求めている。何を書けばいい、どうやって書けばいい、どこに見せたらいい、誰に送ればいい。 こんなわたしでも愛してくれますか。 こんなわたしでも認めてくれますか。 朝。23日。文字を書く。 昼。24日。妄想。 夜。25日。筆を置く。 声なき声は無意味でしょうか?
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