熱病

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熱病

愛してるよぉ、なんて冗談で言ったら、俺もだよぉ、なんて腑抜けた台詞が返ってきて、ああ、本当にこの人は、息を吐くように嘘をつく人だと思った。でも、そんなの今更どうでもよくて、朝はとっても冷えるから、暖をとるにはちょうどいいな、人肌ってあったかいなぁ、なんて、覚めない頭で考えた。心の奥の、そのまた奥に、ぽっと浮かんだ感情なんて、きっと言葉にした途端消えちゃうんだ。すき、も、愛してる、も、そばにいて、も。悲しいことに、声に出せば出すほど意味がどんどん薄まって、君に伝わらなくなっていく。別れる前に、次会う約束をしなければ。そうしないと留めていられない。愛の、形が、整わない。 ああ、もうすぐ夜が明ける。
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