20

19/25

2931人が本棚に入れています
本棚に追加
/409ページ
 最後の患者さんがお帰りになり、事務の人達に「お疲れ様です」と声掛けをすると、「お疲れ様です。お先に失礼します」とみんながバタバタと帰って行く。その姿を見送って、奥の事務所で日報を付けている間に、里美は分包機の掃除をしてくれている。  久しぶりに少しゆったりとした帰りの時間。  病院で診察を受けた後の患者さんが、薬局に来るから閉院時間は病院の方が早い。三崎君が帰りの送りをしてくれている時は、お待たせしないように大急ぎで帰りの業務を片付けて店舗を出ていた。  三崎君も毎日大変だっただろう。いつも ”大丈夫だよ” と言ってくれて、その言葉に甘えてしまった。  野々宮果歩とホテルで会った時も駐車場で会った時も三崎君に庇われていた。  私自身が、甘ったれていないで、ひとりで立ち向かう強い気持ちを持っていたら三崎君にも迷惑を掛けないで済んだのかも。    考え事をしながらなんとか日報を書き上げ、ポチっと送信すると、里美に話掛けられた。 「先輩、引っ越し先の候補とかあるんですか?」 「今夜、健治が遅くなるってメールがあったから家に帰ってPCで検索してみようかと思っているの」 「参考までに、路線上りで、3つ目以降の駅だと栢浜(かやはま)市じゃなくて、隣の南代(なみしろ)市になります。朝は下りの電車で少しは電車が空いているし、市町村が変わった方が、いいかもです」  確かに栢浜(かやはま)市の内部で移動するより、安全な気もする。ひと駅違うだけで随分と違う感じがする。 「ありがとう。気が付かなった。そのあたりで探してみようかな?」
/409ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2931人が本棚に入れています
本棚に追加