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Side健治  大学時代からの友人の西川と新庄に久しぶりに待ち合わせをして、飲みに行った。  2人は、大学時代に俺と野々宮が付き合っていた事も知っている。それに、俺と美緒の結婚式にも来てくれた。  予約した居酒屋で名前を告げると洞窟風の4人用の小部屋に通された。  ココなら、込み入った話をしても他の席に人に聞き耳を立てられる心配がない。  飲み始める前に、離婚届けの保証人欄にサインをもらう。予めお願いしてあったからここまではスムーズだ。 「で、浅木ちゃんとなんで離婚する事になったんだ?」  西川に訊ねられて、横にいる新庄も頷いている。離婚届けの保証人になったら当然、理由を知りたいだろう。  取り敢えずで、頼んだビールを煽り、はぁー。と息を吐いてから俺は話し始めた。  お互い既婚者だから大人の関係だと思って、軽い気持ちで野々宮と浮気をした挙句、別れ話をしたらストーカー行為をされて、それから逃れるために仕事を辞めて、離婚をする事に至った話をしたら、心底呆れられた。 「お前それ、自業自得だよ」  西川がポソリと言った。 「自業自得なのはわかっている。でも、まさか、お互い既婚者なのにストーカー行為をされるって思わないだろ」 「野々宮じゃな。アイツ我儘だから、俺はごめんだね。いくら綺麗だからって、よくお前付き合っていたよな」 「大学の頃は、結婚する気も無かったし、我儘もまだ可愛い物だった。まさかあんなに粘着されるなんてな」  と愚痴った。 「軽い気持ちで、浮気なんてするもんじゃないな」 新庄が震えがっている。 「さては、身に覚えがあるな。浮気をしたらすべてを失くす覚悟をしておけ、見本がお前の目の前にいるぞ」  西川が冗談とも本気ともつかない事を言い出す。  俺は、苦笑するしか術がなかった。
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