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*  西川の表情から笑顔が消えて俺を見据えた。 「お前ら、浮気された側に立った事がないだろ。俺はさ、結婚を考えていた子がいたんだよ。その子が元カレと会っていたんだ。街中で偶然見つけてしまって凄いショックだったよ」  西川の言葉に血の気が引く思いだった。俺のケースと類似した話、反対側の立場。 「もう、無理だったね。どんなに謝られても受け入れる事なんて出来なかった。一度、裏切ったヤツが2度と裏切らないなんて思えない。それに元カレと抱き合っていたかと思うと触れる事さえ気持ち悪くなった。浮気をする側は、軽い気持ちでバレなければ良いと思ってしたんだろう。けれど、された側は、深く傷つけられるんだ。だから、菅生が、すべてを失くしたとしても同情できない。何にもしていないのに傷つけられた浅木が可愛そうだ」  西川は、言葉を吐きだすとジョッキのビールをグイッと煽った。   「西川、ごめん」 「謝る相手が違うだろ、浅木ちゃんに謝れ。まあ、浅木ちゃんなら随分垢抜けて綺麗になっていたから他に良いヤツが直ぐに現れるよ」  美緒は、俺が浮気をしたと知った後も許し、抱きしめてくれていた。その裏で言いようの無い思いをして涙を流していた事だろう。  本当に可哀想な事をしてしまった。心から申し訳ないと思う。  その癖、西川の”綺麗になっていたから他に良いヤツが直ぐに現れるよ”という言葉に身を焼く想いをしている。 「ああ、美緒には謝っても謝り切れない事をした」 「全部無くして、何が大切か分かっただろ? まあ、さすがに可哀想だから次の仕事先、心当たり聞いてやるよ。なっ、新庄」 「ああ、聞いておく」  新庄は元気を無くし小さな声で言った。 「新庄、心配すんな。離婚届けの保証人には俺と菅生がなるから、元気出せ」  と、西川が、新庄の背中を叩く。 「縁起でも無い。やめてくれよ」  力無く呟く新庄に、俺は言った。 「まだ間に合うなら、手遅れにならないうちに引き返せ。失くしてからじゃ遅いんだ」    その言葉は、そのまま自分に返ってくる。
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