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Side健治  区役所で、受付番号のカードを引き抜き、憂鬱な気持ちで長椅子にドサリと腰を下ろした。  順番が来るのを待っていると暫くして、番号を呼ばれる。  窓口に番号札を渡し、『離婚届』の提出と免許書の提示であっさりと受理されてしまった。 「あっけないな……」  2人で積み上げてきた時間や想いが、こんなにも簡単に片付いてしまうものだったのかと複雑な気がした。  駐車場に停めていた車に戻り、時間を確認する。  午後1時過ぎ。  この時間帯なら病院の診察は終わってお昼休みのはずだ。  スマートフォンを取り出し名刺アプリを立ち上げ、通話ボタンを押すと、数回のコール音が聞こえた後、「はい、野々宮です」と声がした。 「先日は、大変お世話になりました。アルゴファーマの菅生と申します。今、お電話でのお話、大丈夫でしょうか?」   「菅生さん⁉ こちらもそろそろ、連絡をさせて頂こうと思っていたんですよ」 「本日は私用の連絡になりますが、私から先に用件を申し上げてもよろしいでしょうか?」 「はい」 「奥様の果歩さんにも伝えて頂きたいのですが、本日、私、菅生健治と妻・美緒は、離婚に至りました。果歩さんには、美緒に対して付け狙いや嫌がらせ行為を頂きたくお願い申し上げます」  美緒に野々宮果歩を近付けるな!と、思いを込めて成明に言った。 「……申し訳ない。果歩にも伝えておきます。先日お約束した誓約書を明後日にカウンセラーと弁護士と果歩と義父を交えて、記入する事になっています。書類の受け渡しですが、書留で郵送いたしますか? それとも取りに見えますか?」 「受け取りに伺わせて頂きたく存じます」 「私の仕事の都合で、午後6時から始めるので7時を過ぎてしまうと思いますが、その頃に連絡します」 「わかりました。ご連絡お待ちしています」  俺と美緒の離婚を伝え、誓約書を確実に受け取る事が出来そうで、一応は安心した。    
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