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Side美緒
寂しい気持ちを埋め合うように愛を交した。
それでも離れると思うと心が憂う。暫くは、こんな気持ちが続くのだろうな。
モゾモゾとベッドから起き上がろうと動いていると、健治の腕が伸びて私を包み込み胸の中に抱き留められた。
健治の胸の温かさを感じた。
キュッと腕に力が込められ、健治の声が聞こえる。
「新しく住む所、決めたの?」
腕の中に抱き留めながら、そんな事を聞くなんて、優しくて残酷だな、と思った。
「まだ……土曜日に見に行く予定」
そう、刹那的でもいいからと、これが最後だからと自分自身に言い訳して、あと先を考えず自分から健治を求めてしまった。だから、これは自分の責任。
「そうか、引越しの時、好きな物を持って行って良いよ」
私を愛してるって言ってくれてたのは、本当だと信じている。
その言葉を心の支えにして強くなるから……。
「ん、ありがとう。食器もらってもいい?」
「ああ」
大切な思い出と何気ない日常が詰まったやちむんの食器を貰って、ひとりになっても毎日を積み上げて、何でも自分で出来るようにする。
だから、今だけはこの腕に抱かれて、温かさに包まれて、ゆっくりしても良いよね。
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