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野々宮果歩と不貞行為をしたのはお互い様なのに、慰謝料が支払われる項目があり、複雑な思いを感じたが、婚姻関係破綻に対しての慰謝料だったので、確かに野々宮果歩の起こした行動の結果で婚姻関係が破綻したのだから、受け取る事にした。
婚姻関係破綻の項目があるという事は、俺と美緒が離婚した事が野々宮果歩に伝わっているという事。
それに、何かを言ってもう一度、契約書を作り直し署名捺印をさせ、実行に移す期間が延びるのは疎ましい。
ただ、気掛かりがひとつ。
「この誓約書に書かれている接近.誹謗中傷.連絡先（SNSを含む）の禁止とそれを破った時の違約金、こちらの連絡先の削除についての項目なのですが、もし、約束を破って接近や誹謗中傷をした場合は、違約金が払われるのみなんですよね」
「その通りです」
前から心配していた通り、違約金以外に何かを処罰するような事は出来ない。
野々宮果歩が、誓約書を無視してやって来る可能性は、いくらでもあるのだ。
「果歩さんの入院期間の見通しは、どの位になる見込みですか？」
「今の所、３か月で容態を見て延長する事もあります」
裏を返せば延長しない場合は、３か月で出て来る可能性もある。いや、それよりも前にだって……。罪人ではなく、病人なんだから仕方ないが無いと言えばそれまでだ。
投薬の効果があって、気持ちが穏やかになっているように見えても、何かの拍子にスイッチが入り、攻撃的になる事を知っている。
いつ何時、野々宮が現れるかわからない生活からは野々宮があきらめるまで続くんだ。
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