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三崎君の車の後部座席に里美と並んで座っていると里美が自分のバックの中から本屋さんのカバーの付いた本を取り出した。
「あー、早く読みたい」
本をスリスリと撫でている。
「そんなに面白いの?」
「切ないんですよ。前巻がいい所で終わっちゃったから続きも気になる。先輩は何を買ったんでしたっけ?」
「私のは、これだよ」
と、『100均のグッズを使っておしゃれにインテリアの工夫ができるアイディア集』という、タイトルを見たままの本をカバンから取り出した。
「へぇー、面白そう。少し見せてもらっていいですか?」
「うん、見て見て!こういうの感心しちゃうよね」
と、里美に本を渡した。私は、車の中で本を読むと気持ちが悪くなるから窓の外の景色を眺めていると、夕方の街が流れる景色に寂しさが募る。
とうとう、部屋も借りちゃったから本当にひとりになるんだ。
そんな事をぼんやりと考えていた。
「先輩……先輩、着きましたよ。起きてください」
「えっ!あっ、ごめんなさい。寝ちゃっていたみたい。三崎君送ってくれてありがとう。里美もありがとうね。えーっと、また、再来週。よろしくお願いします」
知らない間に寝ていたみたいで恥ずかしい。慌ててカバンを持ち、外を確認しながらドアを開けた。
「先輩、ご馳走さまでした。ラインしますね」
「美緒さん、御馳走さま。何かあったらいつでも呼んで」
「ありがとう、気を付けてね」
小さくなるテールランプを見送った。
少し感傷的になりながらマンションを見上げる。
私を呼ぶ声が聞こえた。
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