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Side小松里美
美緒先輩に見送られて、車が走り出した。
「三崎センセ! 美緒先輩、だいぶ元気になって来て良かったですね」
「んー。無理をしているんじゃない?」
三崎先生って、本当に美緒先輩の事を良く見ている。
浮気をした旦那さんよりも三崎先生の方が幸せにしてくれると思うんだよね。
「先生、送りの時間が無くなって寂しいんじゃないですか」
「ノーコメント」
「えー、応援しようと思っていたのに冷たいですね」
「暫くは、そっとしておいて」
「そんな事、言っていると横から攫われちゃいますよ。ぶっちゃけ、別れた旦那さんだって、また結婚が出来るんだし、新しい引っ越し先にカッコイイ人がいるかもだし、のんびりしていたらチャンスの神様走り去ってしまううんです。現に一回走って行っちゃったのを私見ました」
私が、力説しても三崎先生は笑って誤魔化すばかりで、お話にならない。
もう、ホントに”一生、誰とも結ばれない”呪いでも掛けてやろうかしら?
先生の車の後部座席にゴロンと横になった。
お行儀悪いの知ってます。不貞腐れてます。
視線を足元に落とすと美緒先輩が座っていた席の足元にさっき見せて貰った100均の本が落ちている。
「先輩、あわてて降りていったから、カバンに仕舞い損ねちゃったんだ」
その本を手に取り、拾い上げた。
「ん?どうしたの」
「あ、先輩さっき買った本を車の中に落としてしまっていました」
「再来週にならないと出勤してこないんだよね。戻るから小松さん届けてくれる?」
「わかりました。先生、ありがとうございます」
三崎先生は、信号の所でウインカーを立てて車をUターンさせた。
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