22

11/23

2930人が本棚に入れています
本棚に追加
/409ページ
 野々宮果歩に殴られ、口の中に鉄の味が広がった。  足元に落ちたスマホの画面には、ヒビが入ってる。  110番緊急登録システムのアプリをタップしようとした所で落ちてしまった。  今の状態なら、殴られたから傷害事件で、刑事告訴も出来る。  警察が来てくれるまで、踏ん張らないとずっとやられっぱなしになってしまう。  足が小刻みに震えているのが、自分でも分かった。  でも、言い返さないと、   「野々宮さんが、どうしてココにいるの? 野々宮さんこそ関係ないじゃない。健治の事が好きなら、なんで健治を困らせる事ばかりするの? 奪うばかりで、欲しがったって、誰も与えてくれない。自分の行いは、自分に跳ね返って来るのを知らないの?」  私の言葉に悔しそうに顔を歪めて、ポケットに手を入れ、喋り出した。   「健治と私はね。大学時代からの恋人同士なの。あなたが横から健治に取り入ったんでしょう。あなたが居なければ健治は私のものなのよ。邪魔なの、消えてくんない? 本当に嫌い」  目が座っている。これは、不味いかも……。  その時、カチカチカチカチと音が聞こえる。  さっきまでポケット中にあった野々宮果歩の右手に、黄色い業務用のカッターナイフが握られていた。  
/409ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2930人が本棚に入れています
本棚に追加