22

12/23

2930人が本棚に入れています
本棚に追加
/409ページ
Side健治  マンションのエントランスホールに降り立つと美緒の姿見えた。  その時、手にしていたスマホが着信を知らせる。  視線を落とすと野々宮成明と表示されていて、スマホの画面をタップした。  「はい、菅生です」  返事をしながら足を進める。  ガラス戸の向こうの美緒は、誰かと話をしているのだろうか?  植栽された植木が邪魔で相手が見えない。 「すいません。野々宮です。あの、果歩が病院を抜けだして……」  野々宮成明の話の途中で、ザワリと嫌な感じがして、急いでマンションのエントランスホールを抜けて外に飛び出した。  「美緒!」    俺が叫ぶと美緒の側に居た黒いコートを着た女が振り返る。    「野々宮……」  唇の色も悪く、目の下にはクマがある、見る影もの無い程に病的な感じで、仄暗い瞳をしている。  その右手に握られた黄色のカッターナイフが目に入った。  手にしたスマホの通話は、まだつながっている。  声を大きくして野々宮果歩に話し掛けた。 「野々宮、何で美緒を狙うんだ。恨むなら俺だろう」  野々宮果歩を挟んだ先に美緒の姿が見える。  今のうちに美緒が逃げてくれればいい。 「何で、あの女なの? あの女は、健治の愛を独り占めにしている。離婚したって言ってもあの女の為なんでしょう? 私の目を欺くために離婚したんでしょう? だって、あの女は健治に会いに来ているじゃない。私は、お父様や成明に健治に会ってはダメ、会いに行くなと散々言われて、サインさせられて、酷いじゃない。なんで、あの女は良くて、私だけダメなの? ねえ?」   
/409ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2930人が本棚に入れています
本棚に追加