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*  視線をずらし美緒を見ると一旦座り込んだ美緒が立ち上がり、ジリジリと後ろに下がっている。  野々宮の意識はこちらに向いている。  俺は野々宮に向けて言葉を投げかけた。 「何度も言うが、野々宮、お前とは別れているんだ。お前のパートナーは、成明氏だろう? 愛を求めるなら俺じゃない。パートナーである成明氏に求めるべきだ」  俺の言葉に野々宮果歩の瞳が揺れている。 「無理! 無理なの。成明と結婚したのに……。お父様が言うから結婚したのに……成明は私の事を見てくれない。成明は私の事なんて興味がないのよ。健治だけが私に優しくしてくれた。それなのにあの女を選んで……誰も私を見てくれない。誰も私の事を愛してくれない」  憐れな女の心の叫びが聞こえた。  親の歪んだ愛情に溺れ、贅沢をする事で自分を満たし、女王のように振る舞った。 お金の力で我儘を通し、愛情の掛け方も知らずに何でも自分のモノのように扱った。  親の決めた相手と想い合うことも出来ず。  俺に執着する事で愛を満たそうとした。  俺は、野々宮を一度も愛した事などなかった。  学生の頃は、一緒にいて楽しく恋心は抱いていたが、我が儘に振り回され、熱が冷めればそれまでだ。その後は惰性で付き合った。  心の底から相手を想う沸き立つような愛情を抱いたのは、美緒だけだ。  
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