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Side健治 「……野々宮、お前、その気持ちを成明氏にぶつけていないだろ? だから、すれ違うし、愛されないんだ。プライドが邪魔をして、パートナーである成明氏に甘える事もしなかったんだろ? バカだな、俺になんて逃げないで、成明氏ぶつかって、甘えれば良かったんだよ。自分で自分の結婚生活を壊して、愛してくれないとか、言うなよ」  軽い気持ちで野々宮の誘いに乗って、自分自身の結婚生活を壊した俺が言う事じゃないが、野々宮が哀れに思えた。   「違う! 私は、悪くない! なんで、わかってくれないの? 健治だけは、わかってくれると思っていたのに!」  語気を荒くし、俺の事をにらみつける。まるで子供の癇癪だ。  野々宮の心が病んでいることは分かるが、だからといって、人を傷つけていいはずがない。 「悪いが、わからないね。俺は、お前のものじゃない。お前の思い通りに動く人形じゃない。お前の我儘に振り回されて、大切な物を失ったんだ」 「健治……」 「野々宮、俺はお前の事を恨みに思う事はあっても愛する事は絶対にない」  そう、哀れだと思っても、許せない。 「酷い、こんなに想っているのに!」 「迷惑だ、俺はお前が嫌いだ。二度と俺の前に姿を現すな!」  カッとなった野々宮が、俺に向かって右手を振り上げる。   「殺してやる!」  野々宮が叫んだ。  振り上げた右手の刃先が鈍く光る。           
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