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Side美緒
「殺してやる!」
野々宮果歩の叫び声が聞こえ、ザワリと鳥肌が経つ。
このままだと健治が野々宮果歩に殺されてしまう。と、足を踏み出した。
その瞬間、誰かが私の横を走り抜ける。
「えっ、三崎君!?」
三崎君が、健治に向かって振り上げられた、鈍く光りを放つカッターナイフを持つ野々宮果歩の右腕を掴み、グィっと逆手を取った。
「グッ!」野々宮果歩が、顔を歪める。
背中の肩甲骨のあたりで腕を捻られ、手の力が抜け、カッターナイフが、そのまま地面に落ち刃先が折れた。
足で、カッターナイフを遠くに飛ばし、野々宮果歩に膝を付かせる。
「離せ! イヤー!」
なおも暴れる野々宮果歩を地面に伏せ押さえつけると、三崎君は顔を上げ、
「酷い人ですね」
と、健治に向かって言った。
「悪い、助かった」
「悪いと思っているなら、この人を押さえるのを代わってください」
「今、お迎えが来たみだいだから……悪いな」
警察車両のサイレンが段々と近く聞こえる。
私は、足の力が抜けてその場に座り込んでしまった。
「美緒先輩!」
声が聞こえ、私の前に屈み込んだ里美の顔を見たらホッとした。
「先輩、頬が赤くなっています。殴られたんですか?」
里美に言われて、頬の痛みを思い出し、口の中の鉄の味が濃くなった気がする。
サイレンの音が一段と大きくなり、警察車両が到着した。
恐ろしい時間が終わったと思った。
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