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 救急車で、健治と私は栢浜(かやはま)市大病院に運ばれ、健治は腕の傷は三崎君の見立て通り、浅いもので傷の縫合のみで済んだ。    病院のトイレに入った時に鏡を見たら、私の顔は、だいぶ腫れてきて、スゴイ事になってしまっていた。自分で言うのもなんだけど、顔のデッサンが歪んでいる。口の横あたりなんて色も赤黒い。  明日から暫く仕事がお休みで良かった。  これじゃ、どっちが患者さんかわからなくなってしまう所だった(汗)    そして、その顔を証拠として写真を撮って残さなければならないのが、女子としてはフクザツな気持ち。    病院の支払い窓口で、診断書の発行料金やら時間外やらなにからが、加算された治療費の支払いが、※第3者行為のため、10割負担なのはお財布が痛かった。  そんなことを考えていたら左腕をアームスリングで吊った健治が話し掛けてきた。   「ごめんな。痛いだろう?」   「ホント、病院代の10割負担はシャレにならないぐらいにイタかった。保険って、ありがたいね」  と、口が切れていて痛いので、ポソリと言った。  時間外の人気(ひとけ)のない病院の待合室に健治の笑い声が響いた。  びっくりして、人差し指を口の前にあてて「しぃー」と言うと、笑いをこらえて肩を揺らした健治が、私の事をチラッと見ては、また笑っている。 「もう、わけわかんない。失礼だな」  と、ぷりぷり怒った。 「いや、顔の怪我の話だから」    私の勘違いで、おかしな回答をして笑われていたのか。と納得をすると私まで笑えてきて、2人で暫く肩を揺らして笑っていた。  大変だったけど、こうしてまた笑い合えて良かったと心から思った。 ※第3者行為 誰かによって傷つけられる行為.例として交通事故など
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