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Side健治  警察署の廊下を歩き、出入り口まで来ると、側にあった長椅子から背広姿の男が立ち上がった。  野々宮成明だ。  野々宮果歩も現行犯逮捕でこの警察署に留置されている。ココに居るのは、何も不思議な事じゃない。   「菅生さん、少しだけお時間よろしいでしょうか」  声をかけられ、「はい」と返事をすると俺と美緒を見据えてから 「菅生さん、浅木さん。この度は、誠に申し訳ございません」 と、深々と頭を下げた。  俺は、ひと呼吸吐くと野々宮成明に向かって話し掛ける。 「今回の事は、いつか起こるのではないかと、常々思っていました。ただ、今回、果歩さんと向き合ってわかった事があります。愛されたいと言っていました。誰も愛してくれないと泣いていました。プライドが高過ぎて、素直に甘えられずに、歪んだ愛情を求めてしまったんだと思います。色々ありすぎて、許す気持ちになれませんが、哀れだと思いました」  俺の言葉を聞いて、野々宮成明は、眉をひそめ瞳を赤くする。  泣くのを我慢しているんだと思った。  夫婦の事は外からはわからない、色々な想いや事情があるのだろう。 「ご迷惑をお掛けして、本当に申し訳ございません。今後は、ご迷惑をお掛けする事が無い様に地方の施設に入れる事に致します。賠償金や示談金については弁護士から連絡をさせて頂きます」 「示談?」  
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