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「示談?」と野々宮成明に聞き返した。
「はい、果歩の事が哀れだとお思いなら、示談に御応じていただけると助かります」
傷害罪の場合は、例え示談に応じても不起訴になる訳ではない。
野々宮果歩の場合のように傷害罪の被害が重たい場合や、凶器などを使っていて行為が悪質な場合などは不起訴になりにくい。ましてや公務執行妨害までついている。
ただ、示談に応じた事で刑罰が軽くなるという事はある。
「直ぐにお返事はし兼ねます。こちらの希望は、今後、果歩さんに煩わされない生活。ただ、それだけです」
実刑になるにしろ、執行猶予や起訴猶予になるにしろ、今後、一生、野々宮果歩に関わらない生活。それが望みだった。
隣にいる美緒も頷いている。
「わかりました」
「そうですね。よく考えてからお返事します」
「よろしくお願い致します」
野々宮成明は、再び深く頭を下げた。
「失礼します」
と、声を掛け、美緒と共に警察署を後にした。
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