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Side美緒  玄関のドアを開けて「ただいま」と暗い部屋に声を掛けながら、明かりを点ける。私の後ろで、コンビニの袋を下げた健治が「お帰り、ただいま」と声を掛けて来た。少し振り返り「ただいま」ともう一度言ってから「先に洗面所使うね」と返した。  ああ、ホッとする空間に帰ってきた。    洗面所の鏡に映る自分の顔は、デッサンが歪んで、赤黒いアザになっているし、唇の端も腫れてヒドイ。  そっと、顔を洗って、タオルもあてるようにして拭いた。化粧水や乳液を付けるのにも気を使う。 「ずっと、マスクしてようかな?」  部屋着に着替えてからリビングに行くと、健治はソファーに座ってコンビニで買って来たモノを右手だけで並べていた。   「悪い、コレ開けてくれる?」  ノンアルコールビールの缶を差し出され、それを受け取り、プシュッと音を立て缶の口を開けた。 「珍しいね。ノンアルコールビールなんて、コップ持って来る?」 「今日は、疲れたから、洗い物増やさないようにしようよ。少し、飲みたい気分だけど、怪我しているからアルコール取らない方がいいからね。ノンアルコールビールにした。美緒の分もあるよ」 健治が、ノンアルコールビールの缶を渡してくれた。 「そっか、それにしても、左腕動かせないの不便だね」 「無理すると傷口が開くから動かさないように言われて、抜糸まで不便だな」 「手伝うよ」 「えっ⁉」  
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