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Side健治 「手伝うよ」  何気ない美緒の一言にドキンと心臓が高鳴る。  もう一度、手を伸ばして良いのかと期待が膨らむが、信じられない気持ちが口をついた。 「えっ?」 「ごめん、ほら、まだ、引越しの準備もあるから、その間だけでもと思って……。居候させてもらっているし、私も顔が腫れちゃって2,3日は、あんまり外出したくないし、どうかなって、思っちゃっただけだから、余計な事を言ってごめんね」  やっぱり、ただの親切心からの一言だったのか、と気持ちが落ち込む。  でも、まだ、少しでも一緒に居られるのならと言葉を返した。 「いや、助かるよ」 「うん、なんでも言ってね。やっぱり、コップ持って来る」  美緒は席を立ち、キッチンからビールグラスを2つ持ってきて、俺の横に座ると、さっき口を開けた缶から金色の液体をグラスに注ぐ。柔らかな白い泡と弾ける気泡が、目に鮮やかに映る。 「乾杯しよ」 と、美緒が言う。 「何に?」 「これからのふたりに」  別れとも、これからも共にとも、どちらにも取れる言葉に戸惑う。  でも、引っ越しとまでと言っていたな。と思い出した。 「これからのふたりに……乾杯」  グラスを合わせると綺麗な高い音を奏でた。  諦め半分、期待半分を込めて、グラスの液体を口にする。      
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