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 Side美緒  カーテンの隙間から光が漏れている。  久しぶりにぐっすりと眠れた気がして、逆に寝すぎなのか凄く体がだるかった。微睡みながら寝返りを打ち、左側を下にすると、ズキッと痛みが走った。 「痛っ!」  痛みで、一気に目が覚める。    ああ、そうだ。昨日、野々宮果歩に殴られたんだ。  昨日の光景が脳裏によみがえる。  振り上げたナイフの鈍い光。健治が切られて、鮮血が流れた赤い色。  野々宮果歩に手錠が掛けられた。    野々宮果歩が、健治や私に付きまとい。気持ちが疲れてしまって、私は健治から逃げ出してしまった。  そんな弱い自分が嫌で、変わろうと思って努力している最中。  逃げ出した弱い自分……。  はーっ、と吐いた息が天井に溶けて行く。  少し離れた隣のベッドで、健治が寝息を立てている。  健治も昨日の事で疲れているんだろう。  そっと、ベッドから置き上がり洗面所に移動した。  ピッとガスのスイッチを押して、浴室に入り、シャワーのカランを押し上げる。ザァーっと少し熱めのお湯が降り注ぎ、髪を濡らしてゴシゴシとシャンプーをして、洗い流してからリンスとトリートメントをする。トリートメントを置いている間に体を洗って、全身をすすいだ。  シャワーを止めて、浴室から上がると洗面台の鏡に自分が写る。  頬の殴られた跡が赤黒く変色している。  昨日、頬を殴られた後も負けずにひとりで野々宮果歩に言い返すことが出来た。  少しずつだけど、変われていると思う。          
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